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在留資格「技術・人文知識・国際業務」と「高度専門職」の違いと採用時の実務ポイント

2025年10月09日 公開

執筆・監修:村元康太郎
JOBs Japan株式会社 代表。大手ソフトウェア開発企業の営業・マーケティング部門にて4年間従事した後、日本語オンラインスクールやIT JOBs in Japanを創業。
1000人以上の外国人に対して日本語学習サポートや、世界15カ国出身・100人以上のIT・機械・電気エンジニアの転職支援など豊富な実績を持つ。

「技人国(技術・人文知識・国際業務)と高度専門職、どちらで採用すればいいのか分からない」

そんな声を、多くの企業の採用担当者から耳にします。

一見似た制度ですが、実は“申請要件・永住への近道・家族帯同の条件”など、企業にとっての影響は大きく異なります。

とはいえ、すべてを制度の原文から理解するのは現実的ではありません。

そこで本記事では、両者の違いと採用実務で注意すべきポイントを、ケースを交えてわかりやすく整理しました。

読み終える頃には、自社に最も適した在留資格の選び方が明確になります。

目次

在留資格の基礎を押さえる ― 「技人国」と「高度専門職」の違い

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 「技人国(技術・人文知識・国際業務)」とは?(対象職種・申請条件・審査の考え方)
  • 「高度専門職」とは?(ポイント制・1号・2号の違い)
  • 2つの在留資格の関係性と位置づけ(“上位互換”ではない理由)

本章では在留資格の基本を押さえ、技人国と高度専門職の“性格”の違いをわかりやすく解説します。

制度の骨組みと審査の視点を先に理解しておくことで、以降の比較や実務判断がしやすくなります。

まず定義、次にポイント制、最後に両者の関係性の順で整理する構成です。

ここで全体像をつかんでから、次の章で制度差の比較に進みます。

「技人国(技術・人文知識・国際業務)」とは?(対象職種・申請条件・審査の考え方)

「技人国(技術・人文知識・国際業務)」は、専門的な知識やスキルを活かしてホワイトカラー業務に就くための在留資格です。

IT分野では、システム開発、設計、品質保証、プロジェクト管理(PM/PMO)、データ分析などが代表的な職種にあたります。

主な要件は、

  • 関連する学歴または実務経験があること
  • 仕事内容がその専攻や経歴と一致していること
  • 雇用契約や給与条件が適正であること

です。

審査では

「専門性」「継続性」「労働条件の妥当性」

が書類で確認されます。

言い換えると、一般的な事務職ではなく、専門的な業務としての説明ができているかが重要です。

職務内容、職務記述書(JD)、組織図、契約書の内容がしっかり整合しているかどうかが、許可の通りやすさを左右します。

「高度専門職」とは?(ポイント制・1号・2号の違い)

「高度専門職」は、学歴・職歴・年収・研究実績・日本語力などをポイント化し、合計点が一定以上になる人に与えられる在留資格です。

「高度専門職(1号)」では、

「研究」「専門・技術」「経営・管理」

などの分野で働くことができ、在留期間が長くなったり、家族の帯同がしやすくなったり、永住申請までの期間が短くなるといった優遇があります。

さらに、一定の実績を積むことで「高度専門職(2号)」へ移行でき、活動できる範囲や在留の安定性が一段と高まります。

ポイントの核となるのは、高い年収やマネジメント経験など、「高度な専門性」を総合的に示せるかどうかです。

2つの在留資格の関係性と位置づけ(“上位互換”ではない理由)

高度専門職は、技人国(技術・人文知識・国際業務)の単なる“上位版”ではありません。

技人国は幅広い専門職に使える一般的な枠組みで、実務ベースで導入しやすい一方、
高度専門職は年収や研究実績、マネジメント経験など「高度さ」を点数で示す仕組みになっています。

そのため、同じ職種でも、担当する役割や報酬水準によってはどちらの資格が適しているかが変わります。

また、申請手続きの複雑さや必要な証拠書類の内容も異なり、社内制度や評価基準が整っていない企業では、高度専門職の取得が難しい場合もあります。

つまり、両者は目的や人材のレベルに応じて使い分けることが大切です。

採用時に押さえておくべき違い ― 制度・手続き・メリットを整理する3つの視点

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 比較①:在留期間・家族帯同・永住までの流れ
  • 比較②:学歴・職歴・ポイント制など申請条件の違い
  • 比較③:企業側の負担と手続き難易度(どこで差が出る?)

結論から言えば、「技人国」は汎用性と導入しやすさが強みで、「高度専門職」は優遇措置と拡張性が魅力です。

在留期間や帯同できる範囲、永住権の取りやすさが異なるため、職務内容や年収、準備できる書類の内容によって、どちらが適しているかが変わります。

ここでは、この3つの観点から両者の違いを整理していきましょう。

比較①:在留期間・家族帯同・永住までの流れ

技人国の在留期間は「5年・3年・1年・3か月」のいずれかで、期間満了ごとに更新が必要です。

帯同できる家族は、基本的に配偶者と子どもに限られます。

一方で、高度専門職1号は原則5年の在留が認められ、2号になると在留期間が無期限になります。

また、配偶者の就労の自由度が高く、一定の条件を満たせば親や家事使用人を日本に呼ぶことも可能です。

さらに、高度専門職には永住許可の要件が短縮されるという大きなメリットがあり、長期的に日本で生活・就労する人材の受け入れに適しています。

比較②:学歴・職歴・ポイント制など申請条件の違い

技人国では、

「仕事内容が専門的な内容に合っているか」と「学歴またはそれに相当する実務経験があるか」

の整合性が重視されます。

 一方、高度専門職は、

学歴・職歴・年収・研究実績・日本語能力などを合計して一定のポイントを満たすかどうか」

で判断される仕組みです。

つまり、技人国では職務内容と契約条件の整合性が、高度専門職では学位・収入・業績などの証拠書類の準備がポイントとなります。

また、高度専門職は更新時に再度ポイントの確認が行われるため、長期的に人材を確保しておくには社内の評価制度や報酬設計を安定的に運用することが必要です。

比較③:企業側の負担と手続き難易度(どこで差が出る?)

技人国は、要件の解釈や適用が比較的柔軟で、職務設計や待遇条件を適切に整えることで申請が通りやすいという特徴があります。

一方、高度専門職はポイント計算やそれを裏づける資料の準備がより複雑になります。

特に、親や家事使用人を帯同させる場合には、追加の証明書類や世帯年収の基準確認が必要です。

ただし、高度専門職には複合的な活動の許可や手続きの優先処理などの優遇措置があり、要件を満たす人材であれば全体の手続き期間(リードタイム)を短縮できる可能性があります。

どちらの制度でも、在留期限から逆算して更新や書類準備を計画的に行うことが大切です。

  迷わないための判断基準 ― 自社に合う在留資格を選ぶ3ステップ

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • Step1:採用したい職種・スキルレベルを整理する
  • Step2:採用後のキャリア(更新・転職・定着)を見通す
  • Step3:在留資格を使い分けるケーススタディ(例:新卒/即戦力)

在留資格を選ぶうえで重要なのは、担当する役割の範囲(粒度)と年収レンジを明確にし、将来的な更新や異動も見据えて制度を選ぶことです。

さらに、判断基準を言語化し、社内であらかじめ合意を形成しておくことで、実務の段階で迷いが生まれにくくなります。

ここからは、そのための具体的な進め方を解説していきます。

Step1:採用したい職種・スキルレベルを整理する

まずは、職務内容と求めるスキルの具体化から始めましょう。

これは、在留資格の適合性を判断するだけでなく、求人票の作成や人事評価の基準にも直結する重要なステップです。

たとえば、

バックエンドエンジニアなら「Go/API設計/クラウド運用:40%」

QAエンジニアなら「自動化テスト:70%」

といったように、業務の時間配分まで言語化します。

また、スキル要件は

「必須(Must)」「歓迎(Should)」「育成前提(Can)」

に分け、年収レンジ・語学要件・就業場所(国内常駐か、海外からの移住か)も明確にします。

ここまで整理できると、技人国か高度専門職のどちらが適しているかが自然と見えてきます。

Step2:採用後のキャリア(更新・転職・定着)を見通す

入社後2〜3年のキャリアプラン(ロールの移行)をあらかじめ設計しておくことで、更新時の不許可や業務ミスマッチを防ぎやすくなります。

なぜなら、在留資格は「更新を前提とした制度」であり、部署異動や役割拡大によって当初の整合性が崩れるリスクがあるためです。

たとえば、

「1年目は機能開発」→「2年目は小規模チームのリーダー」

といったロードマップを描き、そこに評価基準・昇給の目安・語学支援や研修制度を組み合わせます。

また、将来的に高度専門職への移行を見据える場合は、年収水準・マネジメント比率・成果の証拠化(実績の記録)を計画段階から意識しておくことが大切です。

こうした資料を採用当初から整えておくことで、在留資格の更新や移行に落ち着いて対応できますり

候補者も安心感があるので内定辞退の防止にもつながります。

Step3:在留資格を使い分けるケーススタディ(例:新卒/即戦力)

在留資格は、人材のキャリア段階や採用目的に応じて使い分けるのが基本です。

新卒〜第二新卒で職務内容が明確な場合は、まず「技人国」での入国が現実的です。

評価制度をシンプルにし、更新を前提とした育成サポートを用意しておくことで、安定した運用ができます。

一方、シニアやリードクラスの即戦力人材で、高年収・研究実績・マネジメント経験がそろっている場合は、「高度専門職」を検討する価値があります。

家族帯同や永住許可の短縮といった優遇措置は、採用時の大きなアピールポイントになります。

また、移住の時期が読みにくい場合は、「まず技人国で受け入れ、実績を積んだのちに高度専門職へ切り替える」という段階的な設計も有効です。

採用実務での落とし穴を防ぐ ― 在留資格申請・更新時の注意ポイント3選

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 申請前チェック:職務内容と在留資格の整合性
  • 更新時チェック:部署異動や業務範囲変更の扱い
  • 入社前後で気をつけたい書類整備・スケジュール管理

「整合性」「記録」「逆算」の3点を意識すれば、多くの不許可や手続きの遅れは防ぐことができます。

配属計画、職務記述書(JD)、必要書類、社内承認フローを一貫したストーリーとして整理しておくことが、スムーズに進めるための実務のコツです。

ここからは、その3つの要点を順に確認していきましょう。

申請前チェック:職務内容と在留資格の整合性

最も重要なのは、「実際の業務内容が在留資格の要件ときちんと一致しているか」という点です。

審査では、

「専門性」「継続性」「待遇の妥当性」

が書類から読み取られるため、ここがズレていると不許可の原因になりやすくなります。

そのため、求人票・オファーレター・職務記述書(JD)・組織図・評価指標などの文書で使う言葉を統一し、一般事務や雑務と区別できる設計を明確に示すことが大切です。

たとえば開発職であれば、

「要件定義→設計→実装→レビュー」

といった工程ごとの比率や、使用する技術スタックを具体的に書くと良いでしょう。

書類間の整合性と説明の一貫性が取れていれば、審査にも通りやすくなります。

更新時チェック:部署異動や業務範囲変更の扱い

更新でつまずく大きな原因は、入社後の役割変更と書類内容のズレです。

配属の変更や職務範囲の拡大があった場合は、職務記述書(JD)・組織図・評価基準を同時に更新し、本人の実績と結びつけて説明できるよう記録を残しておくことが重要です。

たとえば、マネジメント業務の割合が増えた場合や、研究寄りのポジションに移った場合には、その変更の目的・期間・成果の見込みを明記した説明資料を用意しておくと安心です。

変更内容が軽微でない場合は、専門家に手続きの必要性を確認することも忘れないようにしましょう。

日々の運用を「業務日誌」のように記録しておくことで、更新時にスムーズな説明ができ、審査の安心材料にもなります。

入社前後で気をつけたい書類整備・スケジュール管理

スムーズな手続きのためには、逆算したスケジュール設計が欠かせません。

まず、内定時点で必要書類のリストを共有し、候補者・人事・現場・総務のそれぞれがどの書類を担当するのかを明確にします。

契約書、雇用条件通知書、職務記述書(JD)、組織図、出勤予定表、報酬支払いの証跡などは、最新の版を管理し、提出フォーマットを統一しておくことが重要です。

また、健康診断や住居の手配、初日のITアカウント発行といった準備も、同じタイムライン上で進行管理します。

さらに、期日にはバッファ(余裕期間)を設定し、チェックリスト+週次の進捗確認で可視化しておくと、想定外の差し戻しや遅延にも柔軟に対応できます。

制度を理解して“安心して採用できる会社”へ ― 外国人エンジニアが定着する仕組みづくり

この章で扱う主なポイントは以下のとおりです。

  • 「高度専門職」を活かしたキャリア支援(永住・家族帯同の安心感)
  • 制度理解を採用ブランディングに活かす方法
  • 社内体制整備(相談窓口・情報共有・更新支援の仕組み)

大切なのは、制度の「強み」を社員の体験につなげることです。

高度専門職の優遇措置や、在留資格の更新運用で得た知見を、キャリア支援・情報発信・社内オペレーションに反映させることで、採用力の向上だけでなく定着率の向上にもつながります。

このあとは、その考え方をどのように実務へ落とし込むか、具体的な実装の型として解説していきます。

「高度専門職」を活かしたキャリア支援(永住・家族帯同の安心感)

まず企業が示すべきは、「将来の見通し」です。

高度専門職のメリットである

  • 在留の安定性
  • 家族帯同の柔軟さ
  • 永住要件の短縮

といったポイントは、候補者の不安を大きく和らげる要素になります。

採用段階では、年収レンジ・職務範囲・評価基準を明確に提示しましょう。

また、入社後はポイント維持につながる実績の記録、昇給ルール、語学やマネジメント研修を計画に組み込んでください。

さらに、家族の生活支援(学校・医療・住居などの情報提供)までサポートすることで、移住に伴う心理的ハードルを下げることができます。

こうした取り組みを通じて、候補者に「長く安心して働ける会社」という印象を与えられるでしょう。

制度理解を採用ブランディングに活かす方法

制度をわかりやすく運用している企業ほど、候補者から選ばれやすくなります。

採用サイトや求人票には、想定している在留資格・サポート内容・過去の受け入れ実績を明記し、内定から入国、初日までの流れを示すタイムラインを公開しておくと効果的です。

さらに、候補者向けのFAQや、更新対応・家族帯同サポートなどの成功事例を発信することで、安心感を与えることができます。

説明が具体的で一貫性があるほど、情報の行き違いが減り、内定承諾率の向上にもつながります。

最終的には、こうした制度運用の「透明性」そのものが企業の信頼やブランド価値を高める資産になります。

社内体制整備(相談窓口・情報共有・更新支援の仕組み)

定着を左右するのは、日々の運用体制です。

まず、人事・現場・総務の役割分担を明確にし、相談窓口を一本化しましょう。

入社前から更新までのチェックリストや書類の保管場所・版管理ルールを定め、週次で進捗を共有することで、情報の抜け漏れを防げます。

また、異動や職務範囲の拡大があった場合は、職務記述書(JD)・組織図・評価指標を同時に更新し、在留資格との整合性メモを残しておくことが重要です。

さらに、日本語と英語の情報発信を統一し、生活サポートの依頼フローを整えておくと、現場の負担を大きく減らせます。

このように運用を標準化することで、離職防止や長期定着にも効果が期待できます。

まとめ|制度理解を“採用力”に変える

「技人国」は柔軟さ、「高度専門職」は優遇と安定性が強みです。

重要なのは制度を覚えることではなく、職務内容・年収・証憑の整合性で自社に合う形を選ぶこと。

求人票やJD、評価指標を一本のストーリーで整えれば、審査リスクも下げられます。

採用後の更新や家族帯同まで見据えた運用ができる企業ほど、候補者から「安心して働ける会社」として選ばれます。

制度を理解し、外国人エンジニアの“定着力”を高めていきましょう。

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